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2024.11続編3 大和三郎丸・上瀧勇哲・平成の想い出・小説 mujik(夏川りみ)月桃花 08


1974年3月16日は、私と洋子ちゃんの結婚式。その始まりは、勤めている会社が北九州市若松区にあり、私は趣味の魚釣りで先輩師匠と毎週、大分や宮崎県で磯釣をしていた。そんな時、新人で入社したのが洋子ちゃんのお兄さん。最初は兄さんを釣り仲間として遊んでいたら、妹、洋子ちゃんを紹介され一変で彼女の虜になり結婚した。そして新婚生活は会社のアパート。毎週、弟に兄さんが集まり麻雀にカラオケ、加えて若い20代の釣り人達が多くアパートに来るようになった。そして兄弟5人で魚釣り色々。楽しい若松時代は10年続き、私の人生で最も輝いた時代だった。そして趣味の魚釣りで出会えた釣り仲間に釣り具メーカーさんとの出会い、私が釣りの記事を新聞社、釣り雑誌社との交流を図る事で増々メデアとの繋がりを深めてゆく事になり同等に海洋磯釣俱楽部、九州礒釣連盟、(公財)日本釣振興会、全九州釣ライター協会の、お世話係をする様になった。そして政治との関りを、もっと知るキッカケは行橋市の会社に勤める事から始まった。会社のオーナーが福岡県会議員、そして行橋市長となった田中純さん。その事で定年まで働き、行橋で土に変える事に決めた私。2001年、北九州市から南の京築地域の行橋市に住まいを変えた私と洋子ちゃん。すぐそばに元永小学校。その前が2級河川の祓川があり100m海側を歩くと沓尾漁港、そしてお馴染みの周防灘。家から歩いて30分の近さ、だが、その先の長井の浜海水浴場まではチョットきついのでマイカー利用で、わずか7分。周防灘の海辺で遊べる環境がある。その海辺と私の家を遮ってくれるのが元永山と覗き山。たかが100mも無い高さ。その事で私の家は盆地になっている。潮風が元永山に当る事で、盆地の我が家は一年中暖かく、涼しい。だから米どころとして田が多く、溜池も二つあり、そこから各、農家に用水路が引かれ、私の家も下水管でなく、用水路に水が流される。その事で農家と繋がりが始まる訳だが、都会から来た私の家族は、この地で自然界の多くを学ぶことになる。そして、その一軒家から始まるストリーは毎日が面白い。知らない世界を学ぶ事が出来た。そして中西先輩から頂いたイルミネーションを、中古家に飾りつけした12月。ご近所さんが奇麗、素敵。そして釣り仲間が集う家となった。
大和三郎丸の生い立ちを描く、小説・マイファミリー・シリーズ、お楽しみ下さい 
小説竜神伝説と初恋 小説年上の人 小説年上の人 小説年上の人 小説年上の人
小説「車イスの家族」 小説 他人の子    

フィッシングライフ 
  小説 マイ・ファミリー 第五巻   「他人の子 」   続No.3 


 
登場人物   

◎私、上瀧勇哲(じょうたきゆうてつ)印刷所勤めの私が60才で還暦を迎えた。
 ホームは北九州市から行橋市へ移住して10年になる。

◎妻、  洋子      55才  19才で私と結婚し一男一女の子供を育てる。
◎ユーミン(裕美)私の娘 35才。私が付けたニックネーム。孫娘誕生から5年間、行橋市在住。
 今は大阪府 在住。夫は信久、その子、美優7才。

◎ノブノブ(信久)    40才。私が付けたニックネーム。ユーミンと結婚し、孫娘誕生から行橋市で勤務。今はミータン(美優)と、三人で大阪暮らし。大手玩具会社の大阪本社、営業課長。
◎ミータン(美優)(信久・裕美の子)7才。私が付けたニックネーム。
 私の初孫。行橋市で生まれ5年間、行橋で一緒に育てた可愛い孫娘。

◎谷口 愛(タニグチ・アイ)14才、外国籍の日本人。始めて来た日本、そして福岡・小倉の出会い  
  
「他人の子、主人公」
◎谷口  (タニグチ・カズオ)愛ちゃんのパパ。日本人。
◎鈴木玲子(ずずきれいこ)35才。 愛ちゅんの家庭教師。
山本校長先生      55才。 小倉足立中学校 校長。私の母校
中村俊夫部長      51才。 小倉警察署所山本校長先生の従兄弟
◎浜辺利治        63才。 海洋磯釣俱楽部・会員、会社の先輩
岡本良夫        68才。 海洋磯釣俱楽部ob会員、会社の先輩。
岡本静子  (良夫の妻) 61才。
岡本義治  (良夫の子) 38才。 海洋磯釣俱楽部・会員
岡本美奈  (良夫の子) 36才。 元・海洋磯釣俱楽部 会計事務員
◎岡本小百合 (良夫の子) 34才。


 これまでのストーリーと、これからの、あらまし

①少女との出会い
娘と孫を送った後、北九州市小倉駅前のベンチで読書。そのとき声を掛けてきた、愛(アイ)という女の子。
意外なストリーの展開は、その子のパパとなり小倉を案内することになった。


②少女とデート。
小倉駅前から魚町商店街めぐり、旦過市場で焼きうどん、鴎外橋から小倉城へ、リバウオーク北九州、映画から、井筒屋1階の資生堂で、お試しパック、そしてデナータイムから、まさかの展開。

③ホームスティの始まり。
私のホーム行橋市へ。そして妻との会話から一日だけの約束で宿泊するが、孫娘のような少女に。

④皆からアイドルのまなざし。
行橋市元永区の探検は須佐神社で願い事。今元小学校、今元中学校野球部の試合会場で、人気の少女。

⑤愛(アイ)ちゃんのママが行橋に来る日。
北九州空港ロビーで、まさかの家庭教師、鈴木玲子先生は愛ちゃんの先生。ママの代理で来たとか。

愛ちゃんが知りたい事は、日本人のパパが小倉の人
愛ちゃんとママ、鈴木玲子先生を納得させるほど、ホームステイを続ける訳、「愛ちゃんが知りたい秘密」それを探してやりたい私達の思いを、家族として支える洋子ちゃんと私。

⑦愛ちゃんの探し物とパパの写真
二週間のホームステイと愛ちゃんの宝物は、一枚の写真からストリーが始まる。

洋子ちゃんの故郷、北九州市若松の町を、愛ちゃんと
洋子ちゃんが生まれ育った若松の街と、彼女と結婚するキッカケをくれた会社と、釣り仲間の交遊を知る愛ちゃん。


⑨突然の電話   続編3

⑨突然の電話

今日も一日、愛ちゃんと楽しく遊べて、大満足だったが、一人で寝るのがチョット淋しい私。しかし、遊び疲れで、すぐに寝てしまった。

翌朝、電話ベルで起こされたが、私は受話器を取らなかった。
すると、すぐに洋子ちゃんがやって来て、「お父さん昨日の岡本さん、釣りに行った義治くんが帰って来ないとかで、昨夜から探しているとかよ」
「エッ、昨日はそんなことなくて、釣りに行ってるよ、だけの事だったのに」

「お父さん、どうするの、行く?」
「そりゃー行かなァ」ということで、すぐに着替えて行く準備。
今日は曇で風が強く、多分、若松ひびき灘方面はシケているだろうなァーと思った。
それで、とりあえず防寒着を準備し、愛ちゃんには秘密にして、私だけで行くことにした。

そして昼前に、岡本義治くんが釣りに行った若松脇ノ浦護岸に行くと、岡本さんご夫婦と、娘さん二人が挨拶してくれた。「前日から釣りに行って帰って来ないので、岡本さん、多分ここだと想って来たら、義治くんの車が道路端に駐車してあり、釣り竿が、あの岸壁にあったんだ」とか。「それにクーラーやバッカンもそのままで、もしかしたら海に落ちたかも知れない、とかで、今、若松消防署のレスキュー隊員が潜って探しているんだ。」とか。「もちろん警察署の人達も探してもらっているんだが、分からない、等々の話し」を、岡本さんから聞けた。そのような現場に雪が降り始め、風が更に強くなっている。
パトカー二台と消防車の車があり、関係車輌が7台、みんな忙しくキビキビした動作で、釣り場となる護岸から埋立地を広域に探し、もしかしたら何処かの草ムラで倒れているかも知れないとかで、赤く枯れた長いススキの広場を、くまなく探しているようだ。

沖に巡視艇が、それらの活動を監視している。その前には消防署のゴムボートが浮かび、消防署のレスキュー隊員が周辺の海を捜している緊迫した現場があった。

そして岡本さんの親戚とか釣り仲間が来ていて、久しぶりという声で交わす言葉の次が、出てこない。
とにかく、義治くんを早く探すことが大切。私も、その広い空き地から1㎞ほど沖まで歩く埋立地。
その海岸、岸壁から海を見ながら、もしかして沈んでいないかと、そこまで考えている。
昼タイムも、いったん、消防署のレスキュー隊が海から上がった。
冬の寒さに、冷たい海に潜って探す隊員も大変だと想ったが、私達は何も出来ないでいる、遠くから眺めているだけだ。

美奈ちゃんが、近くのコンビニから買ってきた熱い缶コーヒーを差し入れてくれて「今日は、すみません」「イェ」と言葉にできないぐらい辛い。そばに居る、妹のサユリちゃんも凄く寒そうだ。
夕方までに、40人ぐらいの警察官、消防隊員が必死に探し、とうとう見つからなくて、今日の捜索はこれで終わりとなった。仕方なく帰ることになるのだが、薄暗くなり猛吹雪の中「ジョーさん、家に来んね」と岡本さん。「イャ、今日はまっすぐ帰ります」ということで、暗くなったので、いったん帰宅した。


帰ってすぐに事の説明を洋子ちゃん、そして愛ちゃんに話した。
「パパ、寒かったでしょう」「お風呂、沸いてるよ」等々。それで今日は早速一番風呂にはいる。と言っても身体を温めるだけ。温かい湯の中で今日の私達の行動から、義治君が何故釣り場にいないのか、自問自答している妄想。アノ釣り場は義治君のホームグランド。結構釣り人が良く来ている釣り場。しかし、夜釣りになると、そんなに釣り人はいない。それに昨日は雪が降り西風が強かった。それでも今、アノ釣り場は夜釣りで20㎝サイズのメバルが良く釣れる穴場。それだけに、義治君の気持ちは釣りたい、が勝っていたかも知れない。それに、その釣り場は国道から入って300mもない安全な釣り場。そばにコンビニがあるし、必要なら携帯電話を持っている彼。その上、私達が趣味で活動する九州礒釣連盟海洋磯釣俱楽部の会員でもある。私が会長しているから、より責任がある。それに彼は小学生のころから知っている岡本さんの子供。私達家族と、岡本さん家族は私が始めて若松の会社に入社してからの長い付き合いを義治君としている釣り仲間以上の関係。だから余計に気にかかる、彼の昨日からの行動。
長風呂に想いふけっていると、洋子ちゃんがいきなり、お父さん大丈夫。と声掛けしてくれた。我に返った私。風呂から上がると洋子ちゃんが、全ての着替えを準備してくれていた。ありがとう。40分ぐらい入っていたようで、少し、のぼせているかも。次に愛ちゃんと洋子ちゃんが一緒に入り、今日は何故か静か。
私は温かいエアコンが良くきいている寝室でパソコン作業。ネットで若松脇ノ浦周辺の地図を詳しく調べている。国道そばから入る埋立地は湾の一番奥で、1K先のコンテナ基地から続く広い埋立地の外洋は立入り禁止区域。その地域から外れた奥深い所に脇ノ浦漁港がある。海が繋がっているので潮の流れとか、風の影響で、もし彼が海に落ちたら、何処に流されるか分からない。ライフジャケットは必ず彼は着用している。それは彼の車の中で、仕事着と釣り服を着替えた後がある。磯ブーツも着用してライフジャケットがなかったから。
そんな熱い重いで地図とニラメッコしていたら、愛ちゅゃんが「パパ、ランチ出来たよ」と教えてくれた。

いつもなら、愛ちゃんを囲んで賑やかなコミュニティーがあるランチタイムだが、今日は静か。そして、
愛ちゃんが「昨日行ったパパのお友達、美奈お姉ちゃん、どんなだった?」と聞く。
私 「ウン、みんな寒そうだったけど一生懸命探しても見つからなかったんだ。お昼は美奈ちゃんから温かい缶コーヒーとサンドイッチを貰ったよ。でも可哀想だった」 
愛 「そうだよね」と、愛ちゃんも言葉少なめ。

愛 「明日、行くんでしょう、愛も行く」
私 「無理、むり、明日は、もっと寒いから私だけで行くよ」

洋子ちゃんも「私達が行っても、どうにもならないからね、愛ちゃん」
愛 「そうだよね、でも美奈お姉ちゃん可哀想だね」 「……… 」
明日はもっと寒くないスタイルを考えて、いつもの携帯ガスコンロにヤカンにボンベ。2ℓの水を5本、これに新しいネスカフェ―、コーヒー瓶250gをマイカーに入れ、カップめん等をありったけ入れて、とりあえず準備。洋子ちゃんが予備で保管していたホカロンを30パック出してくれた。有難い、これで仲間達にも温かく過ごせる。今日は疲れたので、早めのお休みタイムした私。

6時に目が覚めた。外は小さな雪がパラついている。それで、今日は魚釣りに行くぐらい、寒くないスタイルにし、防寒服に、ロングタイプの磯ラジアルブーツまで準備した。
そして、いつもの朝食ランチは食パンにイチゴジャムをたっぷり付け、ラクトコーヒー牛乳をチンして頂くころ、愛ちゃんも早起きして、
愛 「美味しいね、甘いラクトコーヒー」このコヒーは、牛乳パックに入ったもので、学校給食に良くでてくる甘いコーヒー牛乳。その甘いラクトコヒー牛乳、愛ちゃんは凄く美味しいとゴク、ゴク、二ハイもおかわりした。朝から良く食べる愛ちゃんだ。そして、

愛 「サァー、パパ行くよー」 
私 「エッ、今日は私だけで行くよ愛ちゃん」
愛 「愛は絶対に行くよ。美奈ちゃんのそばで励ましてヤルんだょ」
私 「ア、そういうことか、それならイイか」
洋子ちゃんは?「私は家で留守番しとく、私が行っても何もできないモン」
私 「そうだね、それがイイ」と私。

洋子ちゃんが、いつも魚釣りで着る、フカフカの赤い防寒着に、セーターのキャップ、パンツも薄手の防寒スラックス。ついでに私と同じ、洋子ちゃんの、がまかつラジアルブーツを愛ちゅん用に、車に入れた。
そんな準備をしていると、もう愛ちゃんは助手席に座って待っている。
私 「今日、前に座るの?」
愛 「そうだよ、パパを勇気づけてやるのだよ」ありがとう、で出発。
東九州自動車道苅田icから東小倉jaに入り北九州都市高速道路から若戸トンネルまで一直線。一般道のバス道路で脇ノ浦埋立て地まで65分で、9時前に着いた。まだ誰も来てないので近くの脇ノ浦漁協組合事務所に行った。

受付してくれた女性に、もう一人の若い男性がいた。久しぶりの漁協に理事長は?
理事長はまだ来ていないとか、仕方ないので受付事務員に「一昨日から釣り人が遭難し、広い海を捜している、そこで漁協の組合員さんが、漁の行き帰りで、海を見てもらい、浮いているかもしれない彼を、探してもらえたらイイのですが」そのような話しをしていたら理事長がやって来た。新しい理事長と面識がなかったので私の名刺を差しだすと、以前(公財)日本釣振興会の釣り場掃除でお世話係していた上瀧さんですね。
お久しぶりです。と、あの時、副理事長していましたので、良く知ってます。とか。
脇ノ浦漁協組合の理事長室に案内され、応接室で理事長と話しが出来るようになり良かった。
その上で、私が知る限りの事情が話せた。
すると、理事長さんが「新聞で知っておりますので、組合員みんなに声掛けしておきます」と言う励ましの言葉を頂いた。
事務所の女性事務員、みんなが私達を見つめてくれる中、そばに居る可愛い愛ちゃんを見つめてくれる。


再び現場に行くと消防自動車が来ており、早速、「今から始めますか?」の私の問いに、
消防署員「イヤ、今日は違う現場に行く途中で、気になって、もう一度見に来たのですよ」
消防署員「今日は、福岡県警察署のレスキュー隊が来ると想います」
私   「そうなんですか」
消防署員「私達、消防署は、まだ生きている可能性がある、早期の現場活動しかできないのです、すいません」「それで今から福岡県警察署の管轄になりますのでよろしく」と言って、赤い消防車が去ってしまった。



そして、すぐにパトカーが二台やって来た。
その後に警察自動車バスがやって来て、レスキュー隊の人だろうか、アクアラングスーツに着替えて潜る準備を始めた。16人ほどの方が海に入るようだった。
それ以外の警察署員が20名ほどの大勢で捜査活動が10時から広域に始まった。
向こうの方で岡本さんファミリーと、その中に愛ちゃんが混じり美奈ちゃんに寄り添っていた。
昨日からの雪が多く降り始め、視界がすごく悪い。もう目が開けてられないぐらいだ。
風も強く、海風は潮水と一緒に運んでくるから尚更、寒く感じる。そして海面から蒸気が沸き上がり、空気が冷たいのか、温かい水温が水蒸気となり湯気が昇っているのだ。

しかし、私が居るこの現場は脇ノ浦埋立地の最奥部で、300mも歩くと国道があり、コンビニがある、安全な釣り場と想っていたが、こんな所でなぜ義治くんが遭難するか、分からないのだ。

若松警察署では、釣り事故でなく、何かの事件に関わっているかも知れない。事故と事件の両方で二日前から捜査をしているらしい。それも、義治くんの勤め先の㈱太平工業とか友達関係、色々あることを岡本さんから後で教えてもらった。

12時にレスキュー隊が海から上がってきて、後でもう一度海に入るそうで、私は早速、車の中で熱湯を沸かした上で、紙コップに入れたホットコーヒーを、お盆に添えた10個、10個、10個と配ってまわった。
「お疲れさまでした」「お疲れさまです」
又、岡本さんの仕事仲間とか、お友達、親戚の人も会社を休んで来ているのだ。
たくさんの人々に熱いコーヒーを出し、おもてなし。

その様子を見ていた愛ちゃんがやって来て「コーヒーを皆に持って行ってあげる」と優しい子。
しばし、可愛い女の子が温かいコーヒーで、おもてなしする様子を見て、みんな笑顔になっている気がする。

そして2時間後、二度目のレスキュー隊が横一列8人で潜り、海底を捜している。
ここの海底は深くて5~6m、砂地でシロキスが釣れる釣り場。冬場の海は澄み切って見通しが良いのだが、今日は雪まじりの強風で波がザワついて海の底が見えない。それでレスキュー隊はじめ、多くの警察署員が苦労されている。その様子を凄く感じる。私も、もう一度、脇ノ浦港までの海岸埋立地を歩き、海辺を探した。

午後4時、レスキュー隊が再び海から上がり、今日はここで終わり、明日もう一度、海に入ると言っていた。美奈ちゃんと愛ちゃんが、温かいホットコーヒーを持ち「ありがとうございます」と、駆けずり回っている様子を見て、コーヒーを持って来て良かった、と、少しイイことした、等々、感じていると、
「パパ、コーヒーね」と小さな声で愛ちゃん入れてくれた。

君がここに居るだけで皆が救われる、そう想った。
午後5時、冬の夜は早く来る。今日はここで皆とお別れした。

しょんぼり、ガックリしている岡本さんには気の毒だが、もう、どしようもない、この現実。



帰宅して、温かいお風呂に入っていると「パパ、着替え、ここに置いとくね」と、明るい声は愛ちゃん。
洋子ちゃんと愛ちゃんは、後から一緒にお風呂に入る様子だ。
洋子ちゃんは、私達が留守している間にお買物して、ディナーの準備が出来ている。
今日は凄く寒かった日曜日。皆、同じ思いで精一杯の事をした。
岡本さんの事は忘れて、洋子ちゃんと可愛い愛ちゃんと、過ごせる時間を大切にしたい。そう想った私。

すると、お風呂上がりの愛ちゃんが、長い髪をクルクル巻いてハンカチーフで止めたスタイルにパジャマ。
洋子ちゃんも、同じ髪型にタオルを巻いてパジャマ姿。
家の中はエアコンが28度に設定しているので、暖かーいと、言うよりは、お風呂の熱気でムンムン。
私は冷たい水をゴックン。
二人の美女がディナーの準備している様子。私はテレビニュースを見ているが、今日の岡本さんの事故ニュースは無かったので良かった。

そして、愛ちゃんが最も楽しみにしている今日のランチは、三ヶ月前、長崎県上五島で釣ったシロキスを三枚に開いたものをカラ揚げにしたもので、それを人参、エノキを加えた甘いルーを餡かけとしたものを、ご飯の上にタップリ、キスと、卵の入った餡を乗せた、シロキス丼。

別にシロキスのフライとか、ミノカサゴとかマゴチの白身をカラアゲ、他に玉ネギを小さく切った天プラ。そして青のりと混ぜてカラアゲにしたチクワ揚げ、等をテーブルいっぱい、並べてある。
私の好きなキュウリとシーチキンの和えたもの、そして温かーいミソ汁。
その他、色々8点が、やっぱりテーブルいっぱい並べられ、今日も洋子ちゃんのディナーは豪華だ。


そして愛ちゃん、不思議そうにシロキス?ミノカサゴ、マゴチという魚を知らない。
白身だけじゃ良く分からない様子。でも、その香りが凄く美味しそうなので「愛、早く食べたーい」

「それじゃ愛ちゃん、お願いします」と、いつもの長―ィお祈り。しかし、今日はお祈りが長すぎ。
5分ぐらいブツブツ言って、静かに「いただきます」する愛ちゃん。
すぐにそのシロキス丼の上に乗ったキスを、ガブッと、ひと噛みすると、

愛 「ウーン、美味しい」大好評のようだ。
洋子「美味しいって言ってくれて、ありがとう。本当に美味しいの?」
愛 「愛はキス丼、始めて食べるのよ」「お魚の身がすごく柔らかいし、なにより魚さんの骨がないの」
私 「そうだよ、洋子ちゃんは食べやすいように、釣ってくるお魚さんの、ほとんど、小さな骨まで取ってしまうんだ」
特にシロキスは三枚に開いてペチャンコにするだろ、それを5匹並べてサランラップし、その上に再び5匹シロキスを並べサランラップ、その事を繰り返して5段にしてチャックパック。冷凍保存してるんだよ。

洋子「お父さんと長崎県五島とか対馬に釣りに行くと、一度に食べれないぐらいたくさん釣るでしょう。それで、こんな風にして冷凍保存するの。今、冷凍庫にキスが500匹ぐらい保存されているのよ」「他に、これミノカサゴ。この魚も35㎝サイズあるのだけど、身にしてしまうとホラ、キスと同じ20㎝サイズでしょ」
洋子「これも凄く美味しいのよ、タルタルソースをかけて食べてみて愛ちゃん」

愛ちゃん、ミノカサゴのカラアゲ取って、白いマヨネーズ、タルタルソース少しかけ、大きな口にパクンと入れると「オーッ、ウマーッ」「温かくて柔らかくて、シャキッとしてママ美味しい」と大好評のようだ。
私 「愛ちゃんは行橋に来てキライな食べ物、まだ一度も聞いてないよね」
愛 「洋子ちゃんの料理すごく上手で、みんな美味しい。愛も料理上手になって、家に帰ってママやお兄ちゃん、お姉ちゃんに作って上げるんだよ」
私 「そうだな、洋子ちゃんと一緒に作るとイイね」 「ハーィ」

今日も色々あったけど、愛ちゃんのおかげで、たくさんの人々が救われているんだ。と感じた一日だった。


次の日、早起きしてテレビを見ていると、なにか憂鬱な気分。それも朝からビュービュー風が吹き、外はミゾレが降っている。それで、朝のランチ前にパソコンに向かって事件現場の地図を見ていると、ニュースで若松ひびき灘で釣り人遭難記事が少し。事件と事故の相応で調査中と、短い記事があった。
こんな風に新聞とかテレビで報道されると、私達釣り人はすごく不安になる。

岡本義治くんはライフジャケットを着用し、防寒ブーツも履いていた。寒くない服装で釣りをしていた様子だし、なにより彼の車の中には着替えた仕事着があったから。そんな彼が、まさかの釣り事故。イャ、事件に関係することかも知れない。等々、複雑な心境の中、再び行く決心で「洋子ちゃん、行ってくるよ」
愛 「待って、愛も行く」と後から追いかけてきた。
チョコンと助手席に座る愛ちゃんだが、大丈夫?私。
愛 「大丈夫だよ」そうか、君が行ってくれると皆が、なごむんだよねと、心の中でそう想って出発。

今日は洋子ちゃん手作り、ランチが二人分あった。最初から愛ちゃんが行くつもりで作ったんだ。



今日も朝9時に着くと、パトカーが一台来ていたが、外はミゾレ混じりで猛吹雪。とても、これじゃー、捜索活動できないと想ったら、すぐに警察車輌がやってきた、それにマイクロバス二台も入って来た。
その後、クレーン車付きのトラックにはゴムボート、他に警察署のマイカーが三台入ってきて、すごく、たくさんの警察署員が来た。昨日は40人ぐらい、今日は60人を超えている。
そして、沖には昨日に続いて水上警察ボートが二隻も沖で待機している。

大がかりな捜査が今から始まるようで、海を眺めていると釣り仲間の矢島が来て「オー、久しぶり」と挨拶。
向こうの方で岡本さんファミリーがやって来て「ジョーさん、すまんね」等々。
その間、愛ちゃんが上手にガスコンロに火をつけ、大きなヤカンをかけ湯を沸かしている。
そばに美奈ちゃんが居て、それを見ている人は姉妹と勘違いしているはずだ。

そして、スノーケルを付けたレスキュー隊員が入る海。
今日は場所を変え、もっと沖側を横一列9人で並んで入り、そのまま海に潜る。
その横ロープを、岸から持つ署員、ハンドマイクで指示を与えながら探している。

その側には警察ボートがサポートし、レスキュー隊員を観察しながら複雑なコミュニケーションしている。
そして、義治くんのブーツを二つ見つけた。これが証拠品となり、彼は海に落ちたということになった。

昼前、スノーケルをかぶったレスキュー隊員の方が海から上がり、もう一度潜るということ。
この寒い海では60分が最大で、交互に隊員が入っていることだった。
そして、代わりのレスキュー隊員が再び昼から潜るということで、やはり大変な仕事をしているようだった。
愛ちゃんは、熱いコーヒーをそのレスキュー隊員に配りながら「ありがとう」「お疲れさま」と、美奈ちゃんと二人で忙しく、来ている人々、みんなに分け隔てなく、おもてなししていた。
そして、凄く励みになる一杯のコーヒーを美奈ちゃんから頂いて凄く嬉しい。

ミゾレ混じりの中で、本当に他人ごとではないこの状況。そして現場には緊張感があった。
私達、親族、会社、友達、ご近所皆さんと一緒に、広い海岸埋立地を探し回り、遺体が海岸に流れ付いていないかを、出来るだけ広域に探した。
沖に停泊している水上警察ボート二隻で、ゆっくり海上から捜査されているようだし、白いウインドブレーカーの警察署員が海岸とか、草むら、磯場の方まで足を延ばして探しているのが遠くから見える。

昼から交代したレスキュー隊員、9人が横一列にロープを持ち、潜り、少しずつ沖に向かって移動しながら進むような感じで、岸から3人ほどの隊員がマイクで細かな指示、警察ボートもそのサポートで必死。
沖には水上警察ボートが、その作業を見守りながら、何かのとき対応できるよう応援している。
そのような操作活動が午後4時まで続き、捜査終了となった。いったん捜索活動は今日で終了。
後は海、陸から捜査活動は定期的にする事を、岡本さんが若松警察署生活安全課、課長から言われたそうだ。



残念なことだが、これも仕方ない。私達は現場で捜査して下さった警察署員みなさんに「お疲れさまでした」「ありがとうございまた」と、言える言葉しかなかった。
暗くなる夕方5時、岡本さんファミリーと一緒に先日お願いした、脇ノ浦漁業組合事務所に入り、組合理事長に「釣り人の捜索活動がひとまず終え、後は警察署と水上署などの捜索が定期的に入ります、それで引き続きご協力お願いします」「その上で、釣り人が探しきれてないので漁協組合の皆様に、そのご報告と合わせて再度、ご協力お願いします」と、もう一度頭を下げた。

その帰りぎわ、
岡本さんが「ジョーさんと愛ちゃん、世話になったね。帰りに茶でも飲んで行かんね」
私 「イエ、今日は帰ります」
  「何かあったら電話下さい」ということにして、ファミリーと、ここでお別れした。

帰りの車の中で愛ちゃん、さすがに疲れたのか、隣りでスヤスヤ熟睡している。そして帰宅し、私ぐったり。
洋子ちゃんが「お風呂沸いてるよ、愛ちゃんと一緒に入ったら」
      「アホカ」で、ゆっくり一人で入り、今日は頭を洗ってサッパリした。

バトンタッチして今日も二人の女の子は風呂場で賑やかしい。
女の子、二人は長い髪を触りあってブラッシングしているが、洋子ちゃんの髪は昔から太くて少し荒い。
でも、ヘアークリームを付けるとストレートになって黒髪が美しいぐらい輝く。それを一つにまとめてポニーテールするのだが、後でホットカーラーするのが習慣になっている。

一方、愛ちゃんは、細い髪で少し茶色が混じり、すごく髪が多い。ストレートにして後ろを揃えているが、長い髪がピカピカ光って見える。それを洋子ちゃんがスプレータイプのレディースヘアー無臭タイプし、よけいにピカピカ。それを一つにまとめポニーテールして、白いリボンを巻いてすぐに出来上がり。
二人してポニーテールしているので、後ろ姿で見間違うことが、もう何度でもある。
そして、女の子、二人が台所でおしゃべりしながらランチの準備もアッという間にできた。

愛 「パパ、いただきますょ」
私 「キッチンテーブルでボーッとしていた私で、ランチが始まる。
今日のメニューは昨日の残り物があったとかで、チャンポン。大きな器に山盛りに盛られた具には、イカ、エビ、丸天、カマボコ、豚肉、モヤシ、野菜がたくさん入り、すごく豪華だ。
それに、カボチャの甘煮、厚揚げ煮、温かいご飯で、今日は身体がすごく温まるランチ。

それで愛ちゃんは、少し上手になったハシを使い、チャンポンメンを底からカキ上げてスルスル。
すると「オイシイ、スープ汁をレンゲですくってゴクン。イイだし汁」と絶賛だ。


洋子ちゃんが、良かったチャンポンで、
愛 「ママ、エビ、イカ美味しいね」「ママ、この丸―ィの何―に」

洋子「これは丸天というもので、魚のすり身を油で揚げているものですよ」
愛ちゃん、大きな口でパクンと食べて「柔らかくて美味しいね、これがお魚さんなの」
私 「魚には色々な種類があってね、テンプラ用とかカマボコなど、魚によって、いろんなが出来るんだよ」
洋子「ホラ、このシーチキンがあるでしょ、これはマグロとかカツオの切り身を加工したもので美味しそうでしょう」
愛 「ママ、すごーく美味しいよ、行橋には美味しいものがたくさんあるんだね」 「……… 」
私 「たくさん食材があるのだけど、それを美味しく調理する、というのがコックさんなんだ」
  「それで洋子ちゃんシェフ、最高だろう?」

愛、「すごく尊敬している洋子ちゃんシェフだよ」 「ありがとう」と、洋子ちゃん。
ほとんど全部たいらげた私達「ごちそうさまでした」
後の片付けは二人の女の子がして、私はテレビのニュースを少し見て、再びパソコンの室に入るころ、外はガタガタと、強い冬の風があった。その日は早めの、お休みタイム。女の子二人はゲームに夢中とか。

⑩悲しみの釣り人

次の日、もう愛ちゃんがホームスティに来て8日になる。
そろそろママが心配しているだろうから私、「洋子ちゃんから愛ちゃんに言ってね」、と
交わしていると「パパ、今日はお天気イイよ」と愛ちゃん。

いつものようにハミガキが済んで、髪をとかして、朝のテーブルに座ると、朝のランチはパイナップルジャムをタップリ付けた耳付きの食パン、これをオーブンで焼くと、ホンワカ柔らかい食パンになるし、ジャムの蜜が食パンに少し染み込んでより柔らかくなる。そして焦げ目はありません。
私は、その上にバナナを一本乗せ、食パンを二つに折って頂くのです。
そしてホットミルクをタップリ頂くのが、私のランチスタイル。

女の子二人は、バナナ無しですが、ベースにしているパイナップルは、お正月前に買って、出窓のファッションにしたもので、今まで置物にしていたのが、甘い香りがしてきたので、そろそろ熟したのでジャムにしたのが洋子ちゃん。
これは洋子ちゃんのアイディアで、オレンジとかリンゴ、ブドウや、ブラックベリーなど、ほとんど果物が熟す、ころになるとジャムにするのです、洋子ちゃんは。
その5つ切り食パンにパイナップルジャムをタップリ付け、二枚の食パンを、ペロリした愛ちゃん、ミルク二杯、お代わりして、今日も絶好調のようだ。
愛 「パパ、天気がイイから今日どこに行こうか?」
私 「私は疲れているねェー、洋子ちゃんは」
洋子「私も疲れていますねェー、パパは」 「ジョークじゃないょママ」
愛 「本気に言っているよ、パパとママは」と、愛ちゃんでした。

私 「それで愛ちゃん、ママに電話したの?」
愛 「朝、電話したらね、探し物が終ったら電話してね、と言われたの」
私 「ヘーッ、結構アッサリしてるんだよナァー、君のママは」
愛 「そうだよ、ママは忙しい人なの」
私 「そうだよね兄弟が多くて、多分、たいへんだと想うよ、君みたいな兄弟が7人だろう?」
愛 「パパ、最後のその話し、少しひっかかるの」
私 「イヤ、君は賢い良い子だから、今ここにいるのだ、という意味なんだよ」
愛 「パパありがとう。でも、どっか行こう」「ママ行こう、何処でもイイよ、お天気も良いし♡」

私 「よし、そんなら愛ちゃんの、お勉強しに行こう、イイね、お勉強だよ」 「エーッ勉強なの」
  「そうだよ、行橋に居る間は勉強しなくちゃ。でないと君のママに申し訳ないからね」
  「で、図書館に行くの」 「そうだよ、君が大好きな図書館みたいなものさ」
愛 「分からないけどイイかぁー、支度するネ」
洋子「お父さん何処行くの、本当に図書館?」
私 「そうだよ、九州国立博物館ついでに太宰府天満宮も一緒に」
洋子「それは喜ぶでしょう、ヘソ曲りだからウフフフ……楽しみ」
愛ちゃんは、今日は図書館に行くつもりで、スクールぽい、淡いピンク色のトックリセーターに、淡いブラウン系のベスト。そして、いつも気になる紺色のミニスカートにハイソックスはユニクロで買ったもの。

みんな洋子ちゃんの若いときのファッションだが、彼女は足が長い、それにウエストが締まってスタイルがすごくイイし、背の高さが洋子ちゃんより高く160㎝を越えている。
「寒いのでタイツ着てね、と洋子ちゃん」「ハイ、ママ」と黄色い声の愛ちゃん。
私は黒いジャケットにクリーム色のパンツで決めると、洋子ちゃんもオシャレして、ピンク色のセーターにブラウン系のジャケット。下のスカートは久しぶりに、愛ちゃんと同じ濃いめの紺色スカート。少しミニっぽいのが気になって、二人とも同じ服装で姉妹に見られるかも知れないと想った。

それで愛ちゃんが、早速「ママ、かわいいよ」「いいでしょう愛ちゃんに少しマネてるのよネー」
二人して白いコートを準備しているから大丈夫と、洋子ちゃんです。
それで、出発。
いつもの東九州自動車道、行橋ICに入り、そのまま小倉東JAに入り、九州自動車道→福岡方面に入ると
愛 「パパ、道が違うよ、右でしょう」
私 「今日は福岡の図書館に行くんだ。同じ小倉の図書館じゃ面白くないだろう」「ウン、イイょ」と愛ちゃん。 それで、けっこう多い九州自動車道、福岡に入ると更に車が多くなり、トラックばかりになったころ、太宰府ICで降りる。そして、すぐにバイパスに入り、九州国立博物館の案内板がある。
カーナビから、左とか右とかを、言っているのが気になる愛ちゃんだった。

愛 「パパ、車が右とか左と言っているね。これって、どうして分かるの?」
私 「これはね、衛星から発信されている電波が私の車、カーナビが検知し、私が設定している場所に案内しているんだよ」「衛星というのは、ホラ、地球をグルグル回っている通信衛星のことを言っているんだよ。詳しくは分からないんだけど、この車にはカーナビといって、衛星と通信しているんだよ」
愛 「すごーィねパパの車」
私 「ホラ、愛ちゃんが持っているスマートフォンも、その機能があるんだけど、これは地上の電波塔から発信されているんだけど、契約すると、カーナビと同じ機能が貰えるんだよ……」

そして九州国立博物館に到着。
愛 「パパ、大きな図書館だね」
私 「イヤ、違うんだ。ここは博物館で、君が住んでいる東アジアとか日本の歴史などを知る、たくさんの資料、展示があり、紀元前の古いものが展示され、それが見られるんだよ。まずは見てからのお楽しみだ」
広いロビーに入り「すごーィ」と圧倒される景観に声が出ない愛ちゃん。
エレベーターそばに博多山笠が展示されて「パパ、これって何?」

私 「これは福岡博多の街で毎年の夏にお祭りがあり、そのとき、この神輿を皆で担いで街を練り歩くんだ」
「すごーィ」と、再び愛ちゃんのスゴーィが連発する。 
サァー、上に上がってみようか。


高い大きな、エスカレーターにチョコンと乗って、見上げると、眩しいぐらいの二人。
みんな愛ちゃんを見ているようで、私までが恥ずかしいぐらいだ。
そして常設展に入り、順路を廻るのだけれど、ここからは洋子ちゃんにお任せして、私は後から付いて行くだけにする。
二人の姉妹は仲良く小さな声でオシャベリしながらお勉強中。
私達夫婦は、もうこの常設展には10回ぐらい来ているから、大まかな展示は分かっているつもり。
しかし、展示内容は定期的に変わり、季節により、かなり変わることがある。又、日本全国各地域から定期的に文化遺産を借り、展示されるので、限定という国宝級のものが、しょっちゅう展示されている。


そして、中央のソファに座っていると、愛ちゃんが横に座り「パパ、中央の大きな土管すごいね」

私 「そうだよ、古代人の王様みたいな人が亡くなって入ったものなんだよ。それで昔は、そのまま埋めるとか、土棺、木棺とかあるんだけど、今の日本社会は、火葬場というところで焼いてしまうんだよ……」
私 「ここで日本の文化を知り、歴史とか貿易、アジア地域全体の社会勉強ができるんだよ」「それで子供達が歴史社会学習の一つとして、学校からここに来てお勉強するんだよ」
愛 「それで愛も、ここに来たのね、パパ」

私 「ん、チョット違う発想だけど、君の住んでいる国、南アジアとかインドネシア、そのパプアニュウギニアと言う国が、日本と、どう関わったかを知れば、もっと君のパパとか、君が知りたい事分かるかナァ」「そんな気持ちで九州国立博物館に来たのだよ」
愛 「ありがとうパパ」そして、洋子ちゃんが「ああ疲れた」と座った。
しかし、すぐに愛ちゃんが「ママ、あの室で、すごくイイ匂いがするところがあるんだよ」

それで、しぶしぶ手を引っ張られていく洋子ちゃん。

昔、日本人の遣唐使の時代、中国と日本の貿易に欠かせないに遣唐使が香木を日本に持って来た。その香木には、色んな匂いがあるのが不思議で、触ったり、臭いを嗅いだりすることができる。
それで愛ちゃん、香木持って犬のようにクンクン、いい香り。

その他に絹織物や、奇麗な糸いろいろ感じて、これが一世紀など信じられない様子。

ここでまで11時。
次が、私が見たい大英帝国100展の資料室の三階に入る。
ヘッドフォーンを借り、詳しく案内してくれる声を聞きながら、ゆったりと遠目で展示資料に壁画、絵画いろいろ。ここでも洋子ちゃんと愛ちゃんがベットリで、私は、ゆっくり2時間楽しめた。

愛ちゃん出てきて「パパすごーィ、愛はすごく勉強したョ」とハグしてきた。
大きな子が甘えて顔を胸にうずめるのでチョット恥ずかしい私、でも嬉しい。今は親子?

で、すぐに「パパ、お腹すいた」
それで玄関前、近くのロイヤルホストに入り、注文は洋子ちゃんにお任せ。
すると、すぐにお冷が来て、中華スープ。
次に何が来るかと想えば、シーフードカレーが、三つ、テーブルに置かれた。
みんな同じもので、私が一番好きなカレーだった。
洋子ちゃんの顔を見て、ウインクしたら、OKのサイン。
そのカレーは愛ちゃんが始めて食べるもの、最初に愛ちゃんが食べるのを確認して、ママ、これ、なあーに?。イカ、次にアサリ貝、エビ、小さく切ったタコに魚の切り身、と、みんなモグモグしてご飯と一緒にペロリとたいらげ、このカレー凄く美味しいね、お代わりしたいぐらい。と愛ちゃんだ。

私、あっけにとられて、愛ちゃんの食欲について行けない。

それで、もう一度館内に入り喫茶店がある。ここでコヒータイム。
愛ちゃんはショートケーキにミルクの注文。食べながら愛ちゃん、デッカイホールに釘付け。

私 「後で一階のアジッパ展を見てみて見ようか、孫のミータンが、一番気に入って遊ぶ所なんだよ。」
  「 たぶん、君の国のものが、何かあるかも知れないョ 「はあーいして」中に入ると、今日は平日なのでガラーンとしている。中は東南アジアの民族資料とか民具がたくさんあり、触って遊べるコミュニティー広場。ミータンなら1時間は遊べる所なのだが、さすがに古い民芸には興味がないらしい。
それで早めに切り上げてしまった。


そして、センサーカラーライトが奇麗な、動く歩道に愛ちゃん、驚いて「パパ、ママすごい、動いてるよ」
私 「この動く歩道、ミータンもすごく好きなんだよ。」
  「私はこれに乗らないでミータンと追っかけ、ごっこをして遊ぶんだョ」
愛 「分かる気がするねパパ」「それで、これに乗ってどこ行くの?」「すぐに分かるさ」で、急斜面のエスカレーターに再び乗って降りると、広い庭園が広がる。その右側には太宰府遊園地。しかし、ここには行かず、広い景観を眺めながら歩く先に大きな赤い鳥居がある。

私 「鳥居と言うんだよ、ここをくぐって行くことで愛ちゃんが探している、お願い事が叶う神様があるんだよ」「ここは太宰府天満宮と言って、九州で最も大きな神社なんだ。そして学問の神様、菅原道真公をお祭りしているところでもあり、君みたいな学生が試験を受けるとき、ここでみんな、試験が上手にできますように、合格できますようにと、お願いするんだ。それと、君のファミリー、家族のことを、ここでしっかりお願いすると、必ず幸福になれるんだよ」

そのようなイイ事ばかりのお話しをしながら 大きな石の橋を渡るとき、下の池にはデッカイ錦鯉がワンサカ泳いで、エサをくれと、パクパクしている。
これもビックリの愛ちゃんだったが、それよりも本殿を前にして、大きい「パパ、これは神社だよね」
そうだよ、ここの氏子は大変だよ。そして、ここでもお参りの前に手を洗って清める愛ちゃん。
お参りする人が多く、順番が廻って来て、早速、いつものように大きなスズが付いたロープを振り回し、ジャラジャラー。そして、愛ちゃんのバッグから千円札だし、入れた。

すごい大奮発のようだが、それだけ願いごとが、たくさんあるのだろうか、と、そばで見ていたら、5分ほど手を合わせ続け「ハイ終わり」と愛ちゃん。「パパ、オミクジが欲しいんだけど」
私 「それなら私がお金を入れるから三枚、君が引いてよ」

愛 「OK」三枚ね、大きなオミクジを取って、一枚ずつ洋子ちゃん、そして私にくれた愛ちゃん。
広げて、私は中吉。洋子ちゃん、吉。愛ちゃん、大吉で「ママこれってイイの?」
洋子「一番願い事が叶う運勢で、この間、お父さんと引いたでしょ、その時も愛ちゃん大吉。そして今日も大吉。愛ちゃんは凄い運勢を持っている。愛ちゃんの夢はかなうョ」と洋子ちゃんだ。
その事を聞いて、大きな目をクルクル回して嬉しそうな愛ちゃん。その特別なオミクジを私が預かり、社殿で、お守り袋を洋子ちゃんが買ってあげて、その大吉紙を、お守り袋に入れた洋子ちゃん。
洋子「愛ちゃん、このお守り袋、大切にしてね。そして貴方のママに見せてあげてね。時々でいいから、行橋の洋子ちゃんのこと、お守り袋見て、想い出してね愛ちゃん♡」
愛ちゃん「ハイ、でも、まだ洋子ちゃんママのそばに居るョ、帰らないョ」
そんな会話を聞きながら、

もう一つのお願い事、絵馬を私が求めて「愛ちゃん、木札に願いごとを書くと叶うのですよ」
「ホラ、みんなたくさん書いてあるだろう」と、絵馬を飾っている。
たくさんの木札を見た愛ちゃん、早速、スラスラ英語で書いた、意味が分からなかったが、どうやら日本語の漢字は難しそうだったので、それを一番高い位置に飾り、再び手を合わせる賢い愛ちゃん。その仕草を感じて、私達も愛ちゃんの目指す事が分かったらイイナァと想った。


その太宰府天満宮の通り道で美味しそうな匂いに敗けた洋子ちゃんと愛ちゃん。
梅ヶ枝餅を焼くお店に入り、3個ずつ注文して、すぐに店員が梅ヶ枝餅を皿に入れて、温かい大きな湯呑に抹茶。それを早速頂いて、愛ちゃん、甘くて美味しい。が連発する。洋子ちゃんが食べ切れないので、愛ちゃんに1つ、プレゼント。ありがとうママ。
私は、先ほどのカレーに、コヒーで丁度良かったのだが梅ヶ枝餅3個をペロリ。甘いものは別腹なのだ。
そして、洋子ちゃんがオミヤゲに10
コも買い。それを持つ愛ちゃん、ルンルン気分。
それにしても、私も3個食べたけど、さっきランチとケーキ食べたのに、良くお腹に入る三人。

そして、その帰り道、行橋に到着して、nttドコモに電話予約していた、もう一つ愛ちゃんが喜びそうな事。
洋子ちゃんと決めていた、愛ちゃん専用の携帯電話を購入する事。期限付きだが愛ちゃんが気に入ったピンク色のスマホを契約した。もちろん私の娘として家族が繋がるもの。これは洋子ちゃんのアイデアであるから全て彼女任せ。正直、私はスマホはガラ系で、メールも苦手。愛ちゃんは、スマホを利用して色々な情報を得る事になり、苦手な日本語?色々をスマホで勉強出来る。そんな手続きも、娘として登録してしまえば簡素に早くできた。今日は、そんな遊びをして帰ったのが午後6時だった。


夕食は我が家で作るのが美味しいので、外食はしないのだが、洋子ちゃんはチョット不満。
自分で作ったものを食べるより、外食の方が美味しいのだ、と言うのだ。
多分、それはウソと想うけど、すぐにそれが分かることになる。
30分もしないで夕食会が始まる。
今日のメニューは、すぐにできる牛丼。玉ねぎを炒めて牛肉を入れ、冷蔵庫にあったキノコ(エノキ茸)を入れ、甘辛く味付けし、最後に玉子を搔き混ぜ、少し玉子に火が通ったらネギを散らし、それをそのまま丼に入った、ご飯の上に、かけるだけの簡単なメニュー。
別に前準備していた、ハムがたくさん入った、キュウリとリンゴのポテトサラダ。
温めるだけのエビのシュウマイとミソ汁があり、
7品がテーブルに並んだ、手際よい洋子ちゃんの夕食会が始まる。

そして愛ちゃんのお祈り「いただきます」で、上手にハシを握ってパクンの牛丼の味は?で、
注目すると「すっごく美味しいねママ。最高だョ、この味」と愛ちゃん

大きな目と大きな口が動く顔は凄く愛嬌があって魅力的だが、子供のあどけなさが、そのまま表現できているヤンチャな娘は凄く可愛い。
洋子ちゃんが「毎日、美味しいって、食べてくれるだけで作り甲斐があるわ―、お父さん、美味しい?」
私 「すごく美味しいよ」「愛ちゃんが切ってくれたキュウリの床漬けも美味しい」
洋子「エーッ、床漬けでしょう」   「でも、おいしいょ」と私。

そんな楽しいランチが終って、温かいお茶を愛ちゃんが入れていると、ふと留守番電話がチカチカしているので聞いてみると、岡本さんからのメッセージが入っていた。

「今日の朝、義治が見つかり、今、警察署で本人を確かめる為、検査があり、明日、遺体が家に帰り、通夜で次が葬儀」という内容だった。

それで今、電話をすることをためらい、明日の夕方、通夜に直接行くことにした私達。

⑪ 釣り人の遭難事故の結末

昼過ぎの3時、あらかじめ準備していた洋子ちゃんと愛ちゃんの喪服は、昔、洋子ちゃんが着ていたツーピースの喪服がピッタリで、二人の喪服姿が見られるとは想ってもない事だった。
そして後部シートで静かな二人。

今日は洋子ちゃんと示し合わせ、葬儀場に行く前に、義治くんの事故現場に行き、そこにささやかなお花と、温かい缶コーヒー、柔らかいパンを供えて「寒かったろぅ」「冷たかったろぅ」そんな想いを、少しの間、聞いてやりたい気持ちで私達は、事故現場に行き、手を合わせた。



そんな釣り場には、別の釣り人が、何にもなかったかのように釣りをしていたので、その光景を見て、釣り人が「何か、ここであったんですか?」と聞くので
「先日、ここで釣り人が亡くなったので、すいません気分こわして。イイ釣りして下さい」と、
早々に事故現場から離れた。


そして、若松の紫雲閣に着いて、一階のホールに入ると大勢の人々がいた。
義治くんの会社関係者が仕事帰りに、来ているようだった。

その中で釣り仲間が15人ほどいて挨拶をくれた。
義治くんと従兄弟にあたる中西兄弟もいた。
「久しぶり」と挨拶も寂しいのだが、広い式場には左が一般席。私達は右席の後方に三人並んで座った。

右前に岡本さん家族が座っていた。そして中央に義治くんの棺があり、その前に大きな遺影が微笑んでいて、静かに流れた歌は、スピッツの「君が思い出になるまえに」だった。
そして、その曲と合わせて義治くんのスクリーン写真が一枚一枚変わり、私達を偲ばせてくれている。
もう、声が出ない。愛ちゃんも、もらい泣きしているようだ。

「さっき、美奈ちゃんと一緒に泣いていたのよ」と洋子ちゃん。「そうなのか」
すぐに天理教、山手教会の池田会長、その息子さんの経が始まり、広い館内が静まりかえった。
そして、榊の葉を一人ずつ棺の前に置き、一礼をする。私は何故か岡本さんと握手をした。
愛ちゃんは優しく、美奈ちゃん、妹のサユリちゃんとハグして、悲しそうだった。
家族みんな涙が出ていて止まらない様子がひしひし伝わってきて、今日はここでお別れした。

その帰り、洋子ちゃんが「資さんうどん」に行こうということで、東九州自動車道、北九州空港ICを降りてすぐの苅田町の、「資さんうどん店」に入った。
レストランではないがメニューがたくさんあり、うどんはもちろん、丼物が凄く美味しいお店で、それで私はカツ丼と、うどんセットを注文した。
愛ちゃんも私と同じものとして、洋子ちゃんは、お腹すいてないので定番のソバを注文した。

10分もしないで出てきたランチを、少なめの言葉で、黙って頂いた私達。
今日は喪服で入っているから、普通のように話せない?ではないが、やっぱり喪中の雰囲気。
先程の光景が覚めてない、特に愛ちゃんは美奈お姉ちゃんのことを、凄く気にしている様子だった。
しかし、家に帰り、すぐに温かいお風呂に入ると、三人とも元気になった。

コタツに入り、テレビを見たり、いつものDS「友だちコレクション」をしている愛ちゃんが、明るくなって洋子ちゃんにベットリくっつき、こんなときに愛ちゃん、がいたから、私達は救われた、と想った。



次の日、いつもより元気の出る朝ランチは、目玉焼きとウインナーを添えて、紅シャケ、のりが一袋あって、白菜の漬物。洋子ちゃんと愛ちゃんは、納豆がついて、すごく豪華。
私が好きな汁物には、アツアゲがたくさん入り、玉ネギの甘さに、小ネギがたくさん浮かんでいるミソ汁は最高。それに山盛りにした白ご飯は、少し多すぎかも、しかし、今日はモリモリ食べるつもり。
パジャマ姿の愛ちゃんが、長――ィお祈りをして「いただきます」して、大きな口がパクパク動く食べ方。
それが、すごくユーモラスで面白い食べ方。
だいぶ、ハシの使い方が上手になり、白い、ご飯をパクッとする、この一瞬が一番可愛い。
そして、洋子ちゃんがいつもする、食べ方、目玉焼きを、白ご飯の上に乗せて、甘い醤油を少しかけてグチャグチャして食べる半熟卵ごはん。
これを真似た愛ちゃんも「おいしーィ」と、とうとう納豆ごはんと合わせて、二ハイおかわりしてしまった。

元気の良い子供は、たくさん食べることで何でもガンバレル。
苦しいことも、悲しいことも、越えて、強くなるんだ。
それには、やっぱりご飯。食事のパワーは大切だ。この時、私はそう想った。


午前10時に家を出発。
葬儀はお昼前だが、早めに行って岡本さんと話しが、したかった。

多分、洋子ちゃんも、愛ちゃんも一緒の気持ちだろうと想ったからだ。
11時過ぎに昨日と同じ紫雲閣に入り、広い会場に入ると、すでに親族の方が来ており、
「洋子ちゃんも、愛ちゃんも来てくれて、ありがとう」と岡本さん。
岡本さんとの会話の中でも、息子、義治くんが事故した内容、その後のことを色々聞けたが、私は聞いてやるだけ。今日は、そのことしか考えないようにしている。
奥様や美奈ちゃん、サユリちゃんが、来てくれて「ありがとう」の言葉をもらった。
そして、顔が見えない義治くんの棺の前に寄り添い、やさしく棺を触ってから手を合わせた。
私は仏様の信仰で、浄土宗だから手に数珠を通し、手を合わせることしかできない。
そして後方では中西さん兄弟、釣り仲間と話して席に着き、昨日と同じ式が始まった。
天理教、池田会長が下がった後、親族だけが集まり、棺に入った義治くんの前で別れをするのだが、私は、そのお世話をする紫雲閣の職員にお願いし「飾られたお花を少し頂いて、その花を事故現場に供えたいので花束にしてもらえないか」のお願いをしておいた。

そして式場から棺が霊柩車に入り、全員が黙とうして最後のお別れをした。

このとき、先程お願いしていた花束を職員が持って来てくれたので、私達と釣り仲間の有志が集まり、事故現場の脇ノ浦港そばの埋立地岸壁に供えに行った。
彼がここで釣りをして、何かの原因で海に落ちた。
寒い冷たい海で彼はどのような状況であったか分からないが、すぐそばに低い石積みの護岸があるのに、ここまで泳げなかったのか。
「こんなところで」と釣り仲間達が、みんなで自問している。
先程の花束を供え、みんなで手を合わせた。今日はいつもと違う言葉しか出てこない皆だった。

ここで釣り仲間と別れ、昼過ぎに家に帰った。



お昼ご飯を忘れた洋子ちゃんが慌ててランチタイムの準備。
そんなに欲しくないのだが、ゆっくりくつろいでいると、愛ちゃんが「パパごはんですよ」と、可愛い声。
わずか20分で出来たのは、うどん定食。

家で常備している生うどんを温めるだけなのだが、これが少し違うのだ。
スープ付きの生うどん、なのだが、同じ材料のうどんに、玉子とか丸テンプラ、それに四角い揚げを味付し、その中に切り餅を入れ、爪楊枝で切り口を閉じ、少し柔らかく煮込んで添えるものだが、これが極端に美味しいのだ。その上に小ネギを振りかけて出来る簡単ものだが、わずか15分。

他に、白いオニギリの中に、赤い味が付いた魚の佃煮が入っており、昆布の佃煮とか、高菜の漬物が入っている4種のオニギリが10コほど大きなお皿に置かれ、別に、愛ちゃんが始めて作った、黄色い卵焼きが小皿に添えられたが、チョット心配そうな愛ちゃん。
それで「パパ文句言わないで食べてネ」
愛 「卵焼き、上手に出来なかったの。少しこわれているけど……」

私 「十分上手だよ。私なんかグチャグチャこわした玉子焼きなんだよ。問題は味付けだよ」
それを聞いた愛ちゃん「味付けはママがしたから大丈夫」   「……… 」
早速「いただきます」して、お昼のランチタイムが始まると、まず愛ちゃんが一番気にしている玉子焼きを口に入れてモグモグ。
私 「美味しいね。玉子焼き、次も作ってもらおうかな。」と、愛ちゃんの顔を見たらニコニコ笑顔。
そして私、「このウドン美味いねえー、やっぱり洋子ちゃん最高」
愛ちゃんが続いて「きのう食べた「資さんうどん」より、全然美味しい」と、洋子ちゃんはニコニコ笑顔だ。

そしてもう一度、問題の卵焼きを食べて「おいしい、良くできてるよ愛ちゃん」と言ったら
愛 「私、始めて作ったんだよ、四角にするの難しいけど、夕ご飯のとき、もう一度チャレンジするネ」
私 「アァ、何度でもチャレンジするんだ。何でも一度に上手に出来ることはない。勉強が大事だよね、洋子ちゃん♡」
洋子「お父さんはホメ言葉が上手なのね、上手に私達をコントロールして遊んでいるのよね」
私 「そんなことはないよ、美女二人に囲まれて凄く幸福なんだよ」
愛 「又、言ったパパ」  ハハハ………
毎日、イイことばかりある分けない。苦しいこと、悲しいこと、あるのだけど、友達家族も、やっぱり私にとっては不幸なことだから、これはこれで仕方ない事。なにか元気づけてヤルこと考えて見たい。

⑫ 非情なまでの哀しみ

次の日、気持ちを切り替えてショッピングする事にした私と洋子ちゃん。もちろん社会勉強している愛ちゃんにも行橋の事、少しは知ってほしい。それで、行橋で遊べる唯一のデパート、夢タウンに行く事になった。
以前、娘が勤めていたペリカンという玩具屋が2階にある。そこの会社の大阪本社営業部の荒木さんと、知り会って結婚。すぐに美優ちゃんが生まれた。しかし、これが難産で娘が行橋に帰り、小倉健和病院で帝王切開して生まれたので赤ちゃんは1ケ月哺乳機の中、それで、5年間、娘と荒木さんが行橋夢タウンの店長を勤め、私達は娘家族を近所に住まわせ、初孫の美優ちゃんと幼稚園卒業まで行橋で遊べた。
そのような話しを愛ちゃんにしたので、愛ちゃんも私達家族の孫との想いを感じてくれて、愛ちゃんが孫の変わりしてくれている。そんな私のハートを知ってもらえた。

今日は、孫とよく遊んだ夢タウンに行くので、少し、おしゃれしている洋子ちゃんに愛ちゃん。私はいつものスーツ姿。もしかして、ペリカンの店長と話しが出来るかも知れないし、会社や要人と合うかもしれないので、外出時は、ほとんどジャケットかスーツにしている私。プリウスの後ろ席に二人が座って出発が11時。
先日、ユニクロで買ったとかの白のジャケットにクリーム色のスカート。洋子ちゃんも同じようなホワイト系のタンクトップに、二人お揃いの防寒ウエアーは温かそう。私は何故か運転手見たい。
わずか15分で3階の駐車場へマイカー入れて、後は二人の後を付いて行くだけ。最初に行ったのは文具、雑貨に興味を持つ愛ちゃんお気に入りの場所。ここでは、ぎこちない日本語で、店員さんにウルサイぐらい質問を投げかける愛ちゃん。珍しいものが多すぎの愛ちゃん。まず、使い方が分からないから、余計に質問が多すぎ。でも聞くだけ、一つも買うことしないので、
それで「愛ちゃんの欲しいものあったら教えてね」と、洋子ちゃん。でも全く買うことしない愛ちゃんです。

次に、ヤマダ電器店に入ると、テレビコーナーに、自動洗濯機とか、冷蔵庫の種類の多さに、さらに感激。大きな90インチの液晶テレビに、小さなスピーカーで、こんなに大きな音が出ること。パソコンの大きなものから、こんなに小さなもの、携帯電話の色々からタブレット端末から発信されるインターネットの情報。まだまだ他にもたくさん、ビデオカメラとか、マイクロカメラ色々………
愛ちゃんがもっとも興味を示すヘアーカーラーセット、目を丸くして使い方を店員さんに教えてもらっている。 そのような社会勉強を、買物ついでにしている洋子ちゃんです

そして、2階のエベレスト、キャンプ用品に、スボーッメーカー別のジャンルの多さに驚きの愛ちゃん。ここで私から、これまでのお礼のプレゼントしたいのでスニカー買わせて、と、洋子ちゃんにお願いしたら、ソクok。洋子ちゃんが、お父さんからの贈り物だからと無理やりナイキのスニーカーを、愛ちゃんが選んだ。そして直ぐにそのスニカー履くので包装しない。ホワイト色にシルバーの横線が入った最新モデルを履き、「パパありがとう。欲しかったのスニカー」、と言って、ほっぺに、ぷちゅーしてくれた。まさかのキスに驚いて、顔が真っ赤になってしまった。それを店員が見てクスクス笑っていた。


そして、次の日はお天気が良くてお出かけ日和。今の時季、美優ちゃんが好きな場所は温泉。愛ちゃんもその事を洋子ちゃんから聞いていたので、早速、赤村の「原じいの森温泉」に行く事が決まり朝からそわそわの愛ちゃん。
それでも毎日欠かせない朝のランチは、少し上手になった愛ちゃんの玉子焼き、その皿にハムが3枚。昨日の買物で買った甘い黒豆に、キムチに味噌汁に納豆までテーブルに並べられ、私とてもじゃないけど、食べ切れない。それで愛ちゃんが一番気にするデッカイ玉子焼きを、パクーン。パパ美味しい?と愛ちゃん。
私 「凄ーく美味しいよ、しかも上手に巻いているし、大きいのが好き」
愛 「クルクル巻くのが難しいけど、ママが少しずつ玉子を入れながら巻くんよ、と教えてくれたの」
洋子ちゃん「今日は味付けも愛ちゃんしたのよ、分かるパパ」
私 「甘くて塩かげんも、凄くイイ、上手にできているよ」
愛 「パパ、ありがとう」
朝のランチが済むと、二人の女性が後かたずけ、その後ろ姿を見ながら、温かいお茶。愛ちゃんが「パパお替り入れようか?」ありがとう。もらうよ。キビスに入った緑茶は少し苦みがあって、食後の口直しに最高。

それにしても、小倉警察署所から電話がないし、オマケに愛ちゃんのママから電話は来ない。
鈴木先生からも電話がないのでどうなっているのか心配になって来た。それでも、そんな事より今日は赤村の「原じいの森温泉」に行く事が先だった。早速ラフなウインドブレーカーに厚手のパンツルックに着替えた時、
電話が鳴り、洋子ちゃんが取ると、少し無言の時間が過ぎて、静かに電話を切った洋子ちゃん。
「どこから電話?」と私。
愛ちゃんはコタツに入り、友だちコレクションゲームをして、ガハハと笑いコケている。
私 「で、再度、どこから?
洋子ちゃんが静かに「美奈ちゃんが亡くなったって……」「エッ………」声が出なかった二人。
まさかの話しで、信じがたい。一週間前、義治君が 亡くなって今度は美奈ちゃんまで。
もう私の頭の中混乱して、どうしていいか分からない。第一、私が一番好きだった岡村さんファミリーだから余計に、この事は信じられない。しかし、この現実は受け止めるしかない。
でも今すぐ行動する事は出来ない。

しばらく考えて洋子ちゃんに聞いた。「それで葬儀は?」
洋子「もう済んでいるそうで、身近な親族で済ませたとか」「それに詳しく言ってくれないの」
  「やっぱり義治さんが亡くなって、今度は長女の美奈ちゃんでしょう。普通ではありえないことでしょう」とボソッと話す洋子ちゃん。
「美奈ちゃんが好きだった愛ちゃんに、どう話してイイか分からない」と寂しげな洋子ちゃん。
しばらくして「これからのこともあるし内緒の方がイイかも知れない」と私。
洋子「そうだけと、私達は行くんでしょう。岡本さん家に」
私 「そうだなァー、黙って行くしかないけど、困った」

そんな二人を見て、愛ちゃん「どうしたの」        「……… 」しばし沈黙の二人。
それを不思議がって「もしかして愛のママから電話だった?」「イヤ、違う」
愛 「家庭教師をしている鈴木先生でしょう」       「それも違う…… 」
愛 「ママ、パパおかしいょ、愛は何でも聞いて上げるょ」と、私達の間に入り込んで優しそうに見つめてくれる愛ちゃん。
そして洋子ちゃんが口をひらいた「お父さん、正直に行った方がいいかも知れない」
「いずれわかるかも知れない。愛ちゃんの携帯に美奈ちゃんの番号が入っているんでしょう」と洋子ちゃん。
愛 「美奈お姉ちゃんの電話知ってるよ、電話して上げようか?」 
  「アーッ、それはチョット待って」と洋子ちゃん。

私 「じゃ言うよ、愛ちゃん、実はね、今、電話があったのは岡本さんからなんだ。そしてね美奈ちゃんが三日前、亡くなったそうなんだ」
愛 「エッ…… 」 しばらく声が出なくなった愛ちゃん。
そして涙目になってボロボロ涙がしたたり落ちている愛ちゃん。もう何にも話すことが出来ない三人。

遠くから、私が好きなスターコーンFMラジオからJDの石川美和さんの声が聞こえてくる11時。
洋子ちゃんが「お父さん、どうするの?」「電話をもらった以上、知らないふりは出来ないし」
私 「岡本さん、すごく苦しんでいるだろうし、ソッとしてやりたい」と私。
しかし、このままでは済まされない、私の家族と藤崎さん家族は、もう30年以上続いている仲だし。
それに美奈ちゃんが好きだった愛ちゃんをこのままにして、彼女を帰したくない。

そう想うと、一大決心して
私 「洋子ちゃん、昼から行こうか三人で」「それがイイかも」と洋子ちゃん。
コタツでボーッとしている愛ちゃんのそばに私達が座り、洋子ちゃんが温かいホットミルクを入れて「ハイどうぞ」「ありがとうママ」と素直な愛ちゃんがいた。



それで私がボソーッと、昼から岡本さん家に行くつもりだけどね「愛ちゃん、どうする」
愛 「愛、すごく怖いの……… 」
洋子「愛ちゃんが怖い?、分からないけど、やっぱりこの事は受けとめないといけないね」
愛 「美奈お姉ちゃんが居ないことが怖いの…… 」
私 「そうだよね、いきなり電話をもらって、亡くなったと言っても、すぐには受けとめられない。それは私だってそうだ」「でもね、私達は岡本さん家族のことを考えると、凄く悲しい、でも彼達はもっと辛い事を現実に受け止め、悲しい思いを、しているかも知れない」「だって、今まで一緒に生活していた義治くん、そして美奈ちゃんまで亡くなったんだから、凄く苦しんでいると想うよ。そんな中でも私達に電話してくれた」
「私達は岡本さんから凄く愛されている、そう想うよ。もしかしたら家族と一緒ぐらいの気持ちでいてくれるのかも知れない」そんなことをボソボソ言いながら、再び目頭が熱くなってきた。

昼過ぎ、簡単なランチして三人で出発。

今日は普段着で行くことにして、後席の二人は静か。
窓の外をボーッと見つめている愛ちゃんの横顔が凄く寂しそうだ。
若戸大橋を下ってすぐに右折し、そのまま高塔山に登る方向に入り、白山神社手前から右折して、再び高塔山の登り口に岡本さん家がある。
あらかじめ電話をしていたので、すぐに奥様が出迎えてくれ、
「寒かったでしょう、どうぞお上がり下さい」と私達を迎えてくれた。
そして応接間奥の神棚がある室に入り、まさかの二人の遺影を見ることになり、しばし無言の私達。
三人一緒に手を合わせ、目を閉じて5分ぐらい。後ろで愛ちゃんがグスグス泣いて、私も涙が溢れて、もう心の中はメチャクチャになっている。何も話せないでいると、
横で奥様が「美奈がね、前から風邪をこじらせていてね、私の腕の中で亡くなったのね」
と、奥様が気丈に話していたが、いつの間にか奥様も涙を流し
岡本さんも、声が出なくなり、私の手を握ってくれて「ありがとう、よく来てくれて」
妹のサユリちゃんが、美奈姉ちゃんのことを詳しく話してくれるが、何も聞けてない私達。

もう涙が止まらなくていたら「サァー寒かったヤロー、コタツに入ってよ」と、岡本さん。
そして、熱いお茶を入れてくれるサユリちゃん。

それでも、少しずつだが雰囲気が和らげ、少しずつ会話ができるようになった。
たくさん聞いて上げたい事があるのだけど、口が重い。
洋子ちゃんも愛ちゃんも先程から一つも話してない。

その中で岡本さんが彼のこと、そして美奈ちゃんのことを小さい声でボソボソ。
奥様が少し間をあけて、やっぱりボソボソの話し。
そして、祭壇横に美奈ちゃんが描いた油絵が5~6枚置かれ「上手な、奇麗な絵ですね」から始まり

奥様が「美奈ちゃんは絵を書くことが趣味でね、日展に何度もチャレンジしていたのですょ」その話しから、少し雰囲気が明るくなり



やっと愛ちゃんが「この風景、若戸大橋でしょう」「これは高塔山」と言うと、
「そうだよ、お天気の良いときは一人でスケッチしてたんだ」と岡本さん。
二時間ほど、お話しでき、オミヤゲまで貰って、わざわざ車のそばまで、お見送りを頂き
「ありがとう」「また来ます、ありがとうございました」で、お別れした。

車の中で私「どっか行く?」   後ろで黙っている二人。

それで、高塔山公園に行くことにして、頂上の駐車場に止めて「少し散歩してみようか、愛ちゃんは二度目だよね」「ウン、ママとは始めてだよ」


私 「若松では色々あったけど、若松は洋子ちゃんの故郷なんだよ」「それと私の第二の故郷、この街で色んな事、たくさん学んだ事があり、私の人生を豊かにしてくれた街なんだ。それに洋子ちゃんと、この街で、出会い、今、幸福しているのだよ」
愛ちゃんも行橋に来て、たくさんお勉強したね
愛 「ウン、こんな悲しいこととか、楽しかったこと色々」
私 「人間って生きている以上、色んな事があってイイんだ。イイことも、ワルイことも、たくさん体験して大きくなるんだ。テーマは一緒に生活して、生きる家族にある」「幸福な家族もあるだろうし、そうでない家族もある。色々あるのだけど、その現実を踏まえて、そこから自分、私を見つめ、どういうふうに家族の中で、私が生きてゆくのか、その事を、どう向き合い良いファミリーの一員になるか、が私達のテーマなんだ」

「愛ちゃんのファミリー、家族はどうなんだろう。今、君がここに居るだろう、離ればなれで生活している。そして私達のファミリー、家族に、こうして居てくれること、これが正しいこととは想わないが、そのことを君がしっかり自覚して、これからどんな生き方をするか、それが君のテーマだと想う」

展望所から若松の景観を眺めながら、大きな貨物船が若戸大橋の下を通り、若戸大橋の四車線の車の流れが忙しそうに右、左に流れ、国道199号線の通りから、小さな、小さな人の波が見えたりして、今日も街が動いている。戸畑、八幡、そして若松の工場群から工場の煙が風に流され、愛ちゃんの髪が舞い上がっては、ソッと髪を撫でている、しぐさが少女のように爽やか。
その隣りで優しい風を受けている洋子ちゃんは、すまし顔で清楚。

この二人を見つめていると、なぜか不思議に元気が出てくる私。 「サァー帰ろうか」

私 「洋子ちゃん買い物あるの?」
洋子「帰りがけ、苅田のトライアル店に寄ってくれる」 「OK」で出発。
いつもの有料道路で帰ると30分で国道10号線、苅田町のトライアル店に着いた。
今日は久しぶりに二人の後を追いかけた。もう先程のしっとり感はなくなり、愛ちゃんと洋子ちゃんは、いつものように手をつないでベットリ。私はその後をゆっくり追った。


愛 「ねェママ、今日のランチの予定は?」    
洋子ちゃん「そぅねェー、愛ちゃん何がイイ?」

愛 「何でもイイよ、ママと一緒に料理作りたい」 
洋子ちゃん「ありがとう」等々

いつもの二人に戻り、私も気持ちが晴れた想いでいると、後ろから声を掛けられた。

「上瀧さんじゃないですか、こんにちは」と挨拶されたのが、釣り仲間の佐藤さんだった。
彼も買い物中で、そばで奥様がニコニコして「上瀧さんに、あんな大きなお孫さんがいたんですね」 
「ハァー」と濁していたら


佐藤「今度、鶴見に行きませんか」と、釣りの話しが盛り上がっていると、奥様がいなくなって、私達は自販機そばで缶コーヒーを飲み、佐藤さんはタバコを吸い「最近、寒くなって釣れないんですよ」……等々、釣りの話しが20分も続いたころ、買物を終えた洋子ちゃんが来て「アラ、佐藤さん、こんにちは」「こんにちは」で始まり、佐藤さんが不思議そうに「そちらの娘さんは?」

愛 「愛と申します、どうぞよろしく」と挨拶して、次の言葉を待つと、
愛 「私、ホームスティでお世話になっているのです」 
佐藤「ァ、そうですか」と、可愛い少女から挨拶された佐藤さん、少し赤くなっている様子。

佐藤「上瀧さんイイですね、こんなに可愛い子とホームスティなんて素敵じゃありませんか」等々、

冷やかされて車に乗った私達。
バイバイする愛嬌タップリの愛ちゃんに、ホカホカになっている私達。
佐藤さんは多分、このことを釣り仲間みんなに言いふらすと想っているが、その時は、愛ちゃんは、ここには居ないんだと想い、帰宅した。
今日は大変な一日だったが、大仕事は一つクリアした。後は時が過ぎるしかない、と割り切った私だった。


初めての釣りと温泉  他人の子、第一部・完結編4へ続く

 

※私用している女の子は孫のミータンです。


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マイ ファミリー 第五巻 続編 3

   小説  他 人 の 子








    作者・編集・発行人 大和三郎丸 (上瀧勇哲)